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集客・見える化 業務改善コラム

売上がピークの「20分の1」まで落ちたサロンを、
どう読み解いたか ― まず「市場はまだあるのか」を確かめる

業務改善コラム / 集客・見える化 / 読了目安:約16分

先にお伝えしておきます。これは「立て直して大成功しました」という成果自慢の記事ではありません。 この取り組みはいまも進行中です(直近で明確な改善が出始めた段階)。
それでもこの事例を公開するのは、私たちが課題にどう向き合い、どんな順番で原因を絞り込み、なぜその一手を選んだかという考え方こそ、 ご相談を検討されている方に一番見ていただきたい部分だからです。本業のEC・Amazon運用で使っている「数字で原因を絞り込む」考え方が、まったく別業種のサロンでもそのまま効く——その実例としてお読みください。

※ この事例は、当社が経営分析・数字の見える化を支援している韓国式肌管理サロン 「EARNEST 大阪心斎橋店」earnest-shinsaibashi.com)のものです。 掲載は店舗の許可を得ています。なお同店の公式サイトも、当社が制作・運用しています。 売上の実額は伏せ、ピーク月を100とした相対指数や割合でお見せします。数値はすべて、当社が分析に用いた実データに基づくものです。

改善の途中経過(相対値・見込みを含む)

BEFORE(支援前)

  • 営業利益:赤字
  • 売上:ピークの「20分の1」水準まで下落
  • 集客:人気1メニューへの一本足(特需頼み)
  • 数字:月1回どんぶり勘定、原因が見えない

AFTER(直近月・改善途上の見込み)

  • 営業利益:黒字に転換(利益率 約30%)
  • 売上:前月比 約4倍
  • 集客:複数経路に分散(LINE新規・サブスク継続の芽)
  • 数字:毎朝Slackに自動で届き、その日に判断

※ 実額は伏せ、相対値で表示。直近月は予約見込みを含む途中経過で、取り組みは進行中です。

1. 起きていたこと:売上はピークの「20分の1」になった

ご相談をいただいたとき、サロンのオーナーは率直にこうおっしゃいました。「なぜ落ちたのか、自分でも分からない」。 口コミの評価は高く、技術にも自信がある。スタッフはきちんと出勤している。それなのに、いつの間にか来店の勢いが止まってしまった。

まず、1年強の月間売上を「ピーク月=100」とした相対指数にして、1枚のグラフにしました。これが出発点です。

100 5 456 789 101112 123 45 2025年 2026年 ピーク → 直近:指数100→5(約1/20)
※ 当社が分析に用いた売上管理データより作成。縦軸はピーク月(2025年6月)を100とした相対指数。

ポイントは「1ヶ月で突然ゼロになった」のではない、ということです。 ピークから1年あまりをかけて、売上は100→5、つまり約20分の1までゆっくり縮んでいきました。 一発の事故ではなく、じわじわ進む地盤沈下。この「落ち方の形」こそ、原因を突き止める最初の手がかりになります。

2. まず「感覚」を捨て、4つの実データを並べた

こういうとき一番危ないのは、「たぶん広告が弱いから」「接客の問題かも」と感覚で原因を決めつけることです。 決めつけると、その思い込みに合う対策ばかり打ってしまい、本当の原因はそのまま残ります。

そこで私たちは、まず判断材料になる実データを4つ集め、机の上に並べました。

① 集客レポート

予約サイト公式の分析データ。表示数・予約率・口コミ・お客様の層・空き枠まで分かる。

② 売上管理表

1年強の月次売上・新規/再来・メニュー別売上・コース契約額。

③ 掲載ページ・発信履歴

いまお客様に見えている全クーポン・メニュー・価格と、ブログ/TikTokの投稿履歴。

④ 市場の検索トレンド

提供メニューに関わるキーワードの検索人気度(全国・地域・季節)。店内ではなく“外の需要”を見るための一枚。

この4つは、ふだんバラバラに存在していて、誰も「つなげて」見ていませんでした。 「市場はあるのか/どこから人が来て/どこで落ちているか」は、データを1本の線につないで初めて見えてきます。これはAmazonの売上分析とまったく同じ作法です。

3. 最初に確かめたのは「市場がまだあるのか」

こうしたご相談で、私たちが打ち手の前に必ず確かめることがあります。それは 「そもそも、このお店が戦っている市場はまだ存在しているのか?」です。
もし市場そのものが消えているなら、いくら店内を磨いても回復しません。その場合の正しい助言は「撤退・転換」です。 逆に市場が残っているなら、落ちた分は取り直せる方針が180度変わる分岐点なので、ここを感覚で飛ばしてはいけません。

そこで、提供メニューに関わるキーワードの検索人気度(期間内のピークを100とした相対指数)を、市場全体・季節・地域の3つの角度で並べました。

見た角度分かったこと判定
カテゴリ全体の需要
(毛穴洗浄・ピーリング系)
全国の検索人気度は、ここ2年ずっと中位(指数40〜60台)で横ばい〜微増。需要は消えていない。 市場アリ
季節性 毛穴・ピーリングは夏(5〜8月)が高く冬(12〜2月)が低い。落ち込み期は元々の閑散期と重なる。ただし“ほぼゼロ”は季節性では説明できない。 一部だけ説明可
地域(心斎橋 vs 梅田) 同じ大阪でも「梅田 エステ」の検索が「心斎橋 エステ」の4〜5倍。立地の集客力に構造的な差。 不利だが致命的でない
主力メニューの需要
(黒ずみ・ピンク系の永続施術)
2025年春に検索が急上昇(プチブーム)→ その後は低下し、現在は最盛期の約3割の水準で下げ止まり。ブームは去ったが、ゼロにはなっていない。 ブーム終了・市場は残存
※ 検索人気度(相対指数)データより作成。数値は“検索回数”ではなく、期間内ピークを100とした相対値です。

結論:売上崩壊の主因は「市場の消滅」ではない。 起きていたのは ①主力メニューの特需(プチブーム)が終わったこと、②同等の施術がより安く受けられる選択肢にシェアが流れたこと、の2つでした。 カテゴリの需要自体は残っている——だから私たちは「撤退」ではなく、“通い続けてもらえる”メニューで取り直す方針を選びました。 市場があると確認できたからこそ、お店も次の打ち手に踏み込めたのです。

4. 「リピートが原因」という仮説は、外れだった

市場が残っていると分かれば、次は「店内の、どこが折れているか」です。私たちが最初に立てた仮説は 「リピート(再来)が壊れているのでは?」でした。常連が離れれば売上は落ちます。自然な疑いです。

ところが予約サイト経由の再来だけを見ると低く見える一方、電話・LINE・店頭での再来を足すと、再来率は40〜54%。むしろ後半は上向きでした。仮説は外れです。

新規再来再来率主力施術の売上
(ピーク比)
10月6440%28%
11月14422%5%
12月101050%12%
1月121352%18%
2月111354%22%
3月91053%2%
※ 売上管理データより作成。主力施術の売上はピーク月=100%とした相対値。

この表には、もう一つ重要なことが写っていました。人はちゃんと来ているのに(再来率は5割前後で安定)、一番右の「主力施術」の売上だけがピーク比2%まで消えている。 来ている再来のお客様も、安いメニューしか使っていません。

ここで分かったのは「リピートが無いのではなく、続けたくなる“高単価の中身”が消えた」ということ。 仮説を一つ潰したことで、原因の場所がぐっと狭まりました。外れた仮説も、原因を絞り込む立派な前進です。

5. 数字で原因を「予約の一段」に絞り込む

次に、集客を「見つかる → 興味 → 予約」の3段に分け、それぞれの数字を競合平均と並べました。 どの一段で人が漏れているかを、はっきりさせるためです。

① 発見(表示数)

1,251

競合平均 1,296

ほぼ平均

② 興味(クリック率)

55.2%

競合平均 43.1%

平均の1.3倍 ◎

③ 予約(予約率)

0.9%

競合平均 6.2%

競合の約1/7 ●

答えははっきりしました。お客様はちゃんと見つけて、しっかり興味を持っている(むしろ競合より強い)。 なのに最後の「予約」のボタンだけを押さない。漏れているのは、たった一段でした。

そして予約の一段を詳しく見ると、押せない理由が見えてきます。来店のきっかけになるクーポン(オファー)が十数本しかないのです。競合店はその数倍を掲載しています。 興味は持たれているのに、「いま予約する具体的な理由」を提示する武器が、明らかに不足していました。

6. 売上を支えていた「一本の柱」とは何だったか

では、2月まで売上を支えていた「主力施術」とは何だったのか。売上の中身を分解すると、構造的な弱点が見えました。

最盛期、ひとつの高単価メニューが売上に占めた割合

約8割(70〜83%)

収益のほぼ8割を、たった1つの高単価メニュー(黒ずみ・ピンク系の永続施術)に依存していました。 そこへ、同等の施術がより安く受けられる選択肢が市場に登場し、さらに前章の検索トレンドが示すとおりそのメニューのプチブーム自体が終わった。 「高い理由」を説明しきれなくなり、新規の契約も既存のお客様の継続も止まった。 柱が1本しかない建物は、その1本が折れた瞬間に倒れます。

これはECでもまったく同じです。1つの売れ筋・1つのキーワードに売上を依存していると、競合の値下げや流行の変化ひとつで一気に崩れます。「売上の分散」は、業種を問わない経営の基本です。

7. 自分で止めた集客エンジン:発信量と売上の連動

もう一つ、データを並べて初めて見えた事実があります。 このお店の最大の集客エンジンはTikTokの動画でした。最盛期は主力メニューを主役にした動画を月15〜18本投稿し、なかには10万〜45万回再生のバズも複数。 その投稿の勢いと売上のピークは、見事に重なっていました。

TikTok投稿数うち主力メニュー比率主力施術の売上
(ピーク比)
2025年6月1894%100%
2025年8月11100%82%
2025年10月1338%28%
2025年12月743%12%
2026年2月022%
2026年4月10.3%
2026年5月250%0%
※ 投稿履歴と売上管理データより作成。売上はピーク月=100%とした相対値。

2025年秋から主力メニューの投稿比率が落ち、2026年に入ると投稿“数”そのものが月0〜2本まで激減しました。 エンジンを自分で止めたのです。市場(検索需要)は残っているのに、最大の集客装置を回さなくなった——これは「需要が無くなった」のではなく「取りに行くのをやめた」取りこぼしです。

裏を返せば、ここは明確な伸びしろです。市場が残っていて、過去に再生数というかたちで反応も取れている。 発信を“仕組みとして”戻せば、拾い直せる余地が大きい。見える化と並行して、この発信の再起動も方針に加えました。

8. 手札を並べる:本当の問題は3つ

原因が見えたら、いきなり対策に飛びつかず、まず「解くべき問題」を言葉にして並べます。ここを飛ばすと、対策がバラバラになります。整理した結果、本当の問題は3つでした。

① 「初回だけの店」になっていた

深い割引クーポンが、ほぼ全部「新規限定」。再来のお客様が使える割引は実質1個だけ。お客様にも「初回しか得しない店」と伝わっていました。

② 「毎月通う」低単価メニューが無い

全メニューが「1回お試し」設計。空き枠の大半が毎日空いているのに、気軽に毎月通えるレギュラーメニューが存在しませんでした。

③ 入口と継続の「段差」が大きすぎた

安い体験(〜5,000円)の次が、いきなり月額1.7万円やコース。間をつなぐ中段(手頃な回数券・月額)が無く、お客様がジャンプできませんでした。

ここで強調したいのは、どれも「接客の質」や「努力不足」が原因ではないということです。 口コミ評価は高く、興味喚起率は競合の1.3倍、ブログ更新も競合以上。土台はすでに競合以上に強い。直すべきは「商品設計(メニューとクーポン)」と「発信の再起動」でした。

9. なぜ「単価の階段」を選んだのか

3つの問題を解く打ち手として、私たちはいくつかの方向を検討しました。

  • 案A:折れた高単価メニューを、別の高単価商品で置き換える → また「柱1本」に戻るだけ。同じ事故を繰り返すので却下。
  • 案B:値下げで安いライバルに対抗する → 価格競争は体力のある側が勝つ。サロンの強み(技術・信頼)が活きないので却下。
  • 案C:入口から上位まで「単価の階段」を作り、売上を分散させる → 採用。

案Cを選んだ理由は明確です。これは私たちが本業のECで毎日使っている考え方そのものだからです。 ECでは「入口商品(集客用の手頃な商品) → 定期購入 → 上位商品」と、お客様に一段ずつ階段を上ってもらいます。これをサロンに翻訳しました。

上位

高単価・会員向け | 旧主力メニューは「会員限定の上位オプション」へ位置づけ直す

安いライバルと値段で戦わず、「会員だけの特別」に意味を移す

▲ 一段ずつ上ってもらう

本命

中単価・継続 | 回数券・月額の肌ケアパス(継続売上の主戦場)

ここが一番の稼ぎ頭。入口と高単価の「段差」を埋める踏み台

入口

低単価・回転 | 〜5,000円台、気軽に毎月通える毛穴・水光メニュー

空き枠を埋め、再来のお客様も使える。母数を増やす

肝は真ん中の「中段」を新設することでした。安い体験で来てくれた人が、いきなり高額コースに飛ばずに済む踏み台。 そして折れた高単価メニューは、捨てるのではなく「結果を求める会員だけの上位オプション」に置き直す。 さらに、市場が残っていると確認できている領域(毛穴・水光・ピーリング)へ、止めていたTikTok発信を戻す。柱を1本から3段に組み替え、エンジンを再起動する設計です。

10. いまの正直な状態と、これから見る数字

冒頭に書いたとおり、ここまでが「分析と設計」です。メニューとクーポンの組み替え・発信の再起動はこれから実行する段階で、成果はまだ出ていません。 結果が出ていないことを、私たちは隠しません。むしろ大事なのは、これから追いかける数字を入れ替えたことです。

これまで追っていた数字これから毎週見る数字(KPI)
一発の高額契約が取れたか稼働率(空き枠をどれだけ埋めたか)
月の総売上新規のお客様の翌月リピート率
お客様一人あたりの月次継続額(ECのMRRと同じ)
入口→中段への引き上げ率/月間の発信本数

「一発の大きな契約」を追うのをやめ、「回転」と「継続」、そして「発信の量」を追う指標に切り替えた。 これも、月に一度の大型受注より積み上がる定期売上を重視するEC・サブスクの発想です。数字を毎週見ながら、メニューと発信を磨き続けていきます。 結果が出たら、また正直にご報告します。

11. 毎朝、サロンボードの数字が自動でSlackに届く

「これから毎週見る数字」を決めても、毎回サロンボードにログインして手で集計するなら、忙しい現場では続きません。続かない仕組みは、無いのと同じです。 そこで私たちは、本業のEC・Amazon運用とまったく同じ発想——「数字は、見にいくのではなく、毎朝向こうから届く」——を、このサロンにも持ち込みました。

毎朝、自動でやっていること

  • サロンボード(HPB管理画面)から自動取得:予約一覧と分析レポートを、人の代わりにプログラムが毎朝見にいきます。
  • 集計:予約数(新規/再来)・稼働率・経路別(HPB/LINE/サブスク等)の見込み売上を自動でまとめます。
  • 通知:その結果を毎朝Slackへ自動投稿。前日比・前週同曜比つきで「増えたのか減ったのか」が一目で分かります。
  • 利益も別表で:売上から人件費・仕入・広告・家賃などを引いた営業利益(本当の利益)を月別に自動集計しています。
ここまで全部、決まった時刻に自動で動くように組んであります。オーナーがやることは、朝にSlackを1通読むだけ

毎朝Slackに届くお知らせ(イメージ)

# earnest-日次レポート
ヤシノミBot 9:05
📅 EARNEST 予約カレンダー集計(本日時点)
・本日の予約:○件(前週同曜 +○)
・今週の稼働率:○%(前週比 +○pt)
・見込み売上:¥○○○
  └ HPB/LINE/サブスク… 経路別の内訳つき
・新規 ○件 / 再来 ○件

※ 表示はイメージです。実際の件数・金額・稼働率は伏せています。

派手な機能ではありません。けれど「毎朝、同じ数字が、同じ形で、勝手に届く」だけで、感覚や記憶に頼った経営から抜け出せます。 どこが伸びてどこが漏れているかが毎日見えるから、打ち手の良し悪しも翌週には判断できる。 ——私たちが自社ブランドでずっとやってきた「数字が回る状態」を、いまEARNESTでも一緒に作っている最中です。

12. 業種を問わず使える「読み解きの型」

この事例はサロンの話ですが、私たちがたどった「読み解きの手順」は、ECでも店舗でも製造業でも同じように使えます。型としてまとめます。

01

感覚で原因を決めつけない

「たぶん○○のせい」で対策を打つと、思い込みに合う施策ばかりになり本当の原因が残ります。まず実データを机に並べる。

02

店内の前に「市場がまだあるか」を確かめる

市場が消えているなら正しい助言は「撤退・転換」。残っているなら「取り直し」。ここで方針が180度変わるので、検索トレンド等で“外の需要”を必ず先に見る。

03

バラバラのデータを1本の線につなぐ

集客・売上・商品ページ・発信履歴のように、別々に存在する数字を「発見→興味→予約」の流れに並べ直す。漏れている一段が見える。

04

仮説は「潰す」ために立てる

外れた仮説(今回は「リピートが原因」)も、原因の場所を狭める前進。当てにいくのではなく、消しにいく。

05

「柱1本」を「階段」に組み替える

一つの売れ筋・特需への依存は、いつか必ず折れる。入口→中段→上位と分散させ、追う数字も「単発」から「継続」へ変える。

「売上は落ちたが、原因が分からない」とき

私たちがまずやるのは、派手な施策の提案ではありません。市場がまだあるかを確かめ、お手元のデータを一緒に並べて、原因を一段に絞り込むことです。
業種はECでもサロンでも飲食でも構いません。「何から手をつければいいか分からない」状態の整理から、お手伝いします。

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